10月14日 第13回講座

午前の部 おもしろ仏像講座 樋口隆秀先生

         ユーモアを交えて仏像の見方を講義される樋口先生
         ユーモアを交えて仏像の見方を講義される樋口先生

おもしろ仏像講座

大阪府民カレッジ講師 樋口隆秀先生

 

特定の宗教に属さない先生が、仏像に興味を持って、調べていくうちに、近所の路傍のお地蔵さんに頭を下げるようになったと言うお話は本日のテーマ「仏像の見方 こころを探る」そのもののような気がする。

誰でも見たことのある仏像を、美術的に見るもよし、歴史的に見るもよし、しかしそのこころを探る立場で見ることの素晴らしさを学んだ。その際、予備知識があった方がよく、祈りの対象であることを忘れず、世間の評価に左右されない自分の目で見たいと思った。


仏像の種類について

具体的イメージ

如来  ;もう悟っちゃた。

菩薩  ;ほんとは悟れるのだけど。

明王  ;また仏さまを信じてないのか。

天部  ;俺たちは神!だけど仏に惚れ込んだ。

 

 

その下に、弘法大師像や行基像や鑑真像のような実在人物の

仏像もある。

 


如来の大仏に関して

       奈良東大寺の廬舎那仏(大仏)
       奈良東大寺の廬舎那仏(大仏)

如来の代表例として、奈良の大仏を取り上げられた。

1,大仏の手の形

 奈良の大仏は右手を右胸の前に出し、手のひらを立てて前方に向けていますが、これを「施無畏印」といい、説法していることを意味し、左手のひらを前方に向けて下に垂らしているのは「施願印」といい、人々の願いをかなえてあげようという意味です。

  

2,大仏建立の意味

 天然痘禍下、聖武天皇と光明皇后は疫病退散を願って建立発議した。建設費は現在の金額で4657億円かかり、聖武天皇は民衆一人一人に、たとえ1本の枝でも、一握りの砂でも持ち寄ってともに大仏を作ろうと呼び掛けた。

 情報量の温度差があった奈良時代と、コロナ禍下の現在の庶民の情報量はかなりの差があるものの、過度に国民を不安にする施策と国民一人一人の自己防衛策のマスク着用で時が過ぎつつある今、この呼びかけは重要な意味があると感じた。

 

3,大仏建立に貢献した鑑真和上と行基

 ともに唐招提寺、近鉄奈良駅前に仏像として安置されている両僧の努力が紹介された。なんとなく大仏を大きいなとしてしか見ていなかったのが、先人の努力に、改めて深い洞察力で大仏鑑賞ができるようになったと感じた。


菩薩のお地蔵さんはなぜ赤いよだれ掛けをしているのか

赤いよだれかけが意味するところは

江戸時代、庶民は病気や間引きによって、わが子をなくし、その子の供養にと、路傍のお地蔵さんに、わが子のよだれが染みついた涎掛けをかけた。

子供は三途の川を渡れなく、賽の河原で迷っていると鬼が来て襲われる。この鬼から子を助けるのがお地蔵さんで、わが子だけを助けて欲しいため、わが子の匂いのする涎掛けをかけて毎日祈った。

それ故、地蔵の顔も時代とともにだんだん子供の顔になっていった。

赤は清浄の印で、還暦のお祝いの赤いものもその表れの一種である。

地蔵さんのない東北地方では、こけし(子消し)にその風習が残っている。

子も育ち、孫も大きくなった世代であるが、いつの世も子を思う親の気持ちは同じである。お地蔵さんの前を通る時、必ず一礼して通る人を見て、ひそかに感動した自分であるが、これからは堂々と感動したいと思った。


天部の興福寺阿修羅像はなぜ憂いの表情なのか

      興福寺 阿修羅像
      興福寺 阿修羅像

阿修羅は帝釈天にわが娘を嫁がそうと考えていたが、その前に強引に帝釈天は娘を奪ってしまった。阿修羅は帝釈天を憎み再三争いを仕掛けた。そのうち娘に子供が出来た。それでも阿修羅は帝釈天を許さなかった。それ故阿修羅の顔は一般に強面に表現される。

興福寺の阿修羅像は、インドの神で元々武神で、厳しい表情を持つものであるが、3つの顔を持つ優しい憂いを含む少年のように見える。

奈良時代の同じ日に生まれた聖武天皇と光明皇后は結ばれ、待望の男児を得たが、夭逝した。施薬院、悲田院の創設者としても有名で、慈悲の心を持った皇后であった。

その悲しみを忖度した仏師は乾漆像を作る際、基王の成長をイメージし3面の顔を作成したとされる。

憂いを含んだ3面は見たものの感動を呼び、人気仏像となっている。

阿修羅像の科学解析で、作造状況が判明した。

科学分析は憂いの表情の原因を究明した

     X線CTデータから作成した三次元画像(正面・断面・原型)
     X線CTデータから作成した三次元画像(正面・断面・原型)

XCTを用いた国宝阿修羅像の健康状態調査と製作技術の解明
国立文化財機構九州国立博物館博物館科学課長 今津 節生氏

 

これまでの研究で、阿修羅像の心木は虫食が無い良好な状態であり、胸部に見える亀裂も表面に留まっていることが判りました。また、鎌倉時代と明治時代に実施された修理の痕跡も明瞭に把握することができました。さらに、三次元データから阿修羅像の塑土原型像を復元することに成功しました。麻布と漆で作られた像内面の凹凸を反転することで原型像を復元したのです。そこから、この原型像は現在の阿修羅像よりも厳しい表情をしていたこと、衣や装身具は原型の段階では表現されていなかったことがわかりました。

午後の部 身近な木のあれこれ 浅川 充先生

みんなにプレゼントされた樹木ガイド100を説明される浅川先生
みんなにプレゼントされた樹木ガイド100を説明される浅川先生

身近な木のあれこれ

樹木医 浅川 充先生

 

先生は、講義に当たって、ディレクターとも協議し、座学だけでなくフィールドワークを取り入れていこうと、約30分程度 建物の外の粟が池共園の中で散策観察をすることを決めたと言われた。

 結果的に、百聞は一見に如かずで、座学での授業態度とは別の強い喰いつきで、多様な質問をしていて、先生の意図は見事に成功したように感じた。


フィールドワーク 粟が池共園での樹木観察

粟が池共園の地図(池の中に我らの教室文化会館、その上池をはさんでフィールドワークした場所)
粟が池共園の地図(池の中に我らの教室文化会館、その上池をはさんでフィールドワークした場所)

当日は10月としては少し暑い中、吾らがカレッジの開催場所富田林市市民会館がある粟が池共園の東北の森の中を中心に、フィールドワークとして数種類の樹木をその生態を中心に講義を受けた。

ソメイヨシノ、イチョウ、ケヤキ、クスノキ、カエデ、カイヅカイブキ等について詳しく説明を受けた。

多くの受講生が、いろいろ質問したので、予定した時間をオーバーするフィールドワークとなった。

正に身近な木あれこれのテーマに相応しい講義であった。

市民会館玄関入り口で、ソメイヨシノの木について、樹木に関しての説明、最近問題となっているクビアカツヤカミキリによる食害に関して説明を受けた。

先生は持参のヤマモモの木のクビアカツヤカミキリの食害サンプルを見せて、樹木の中心の食害を説明された。

一本の雌ぼくと見られるイチョウの木の前で、雌雄異木について、イチョウの木の雌雄の鑑別の仕方、銀杏の雌雄鑑別について説明された。

実際にこの木の下に銀杏の実が落ちていたので、雌の木であることは理解できた。



ソメイヨシノ天敵 クビアカツヤカミキリ

     クビアカツヤカミキリ
     クビアカツヤカミキリ

2012年(平成24年)に初めて中国や朝鮮半島由来の外来種のクビアカツヤカミキリによるサクラの食害が報告されて以来、日本各地で被害報告が相次いでいる。その被害の深刻さから、2018年(平成30年)1月にクビアカツヤカミキリが環境省より特定外来生物に指定された。このカミキリはサクラに穴をあけて卵を産み付けるが、その幼虫が大量発生して木の内部を食い散らかす事態が相次いでおり、特に大量に植樹されているソメイヨシノの被害が著しく、回復不能なダメージを受けて伐採される事例が相次いでいる。20175月にはクビアカツヤカミキリに対応可能な住友化学の薬剤「ロビンフッド」の適用範囲がサクラにも拡大され、対応策の一例となっている。また埼玉県環境科学国際センターではサクラへ寄生するクビアカツヤカミキリ対策として、薬剤注入やネットによる成虫の拡散防止などの方法を広く公開している。


赤松、黒松以外に白松がある。

『斎洞(チェドン)の白松』があるのは憲法裁判所の駐車場  松原中央公園地図
『斎洞(チェドン)の白松』があるのは憲法裁判所の駐車場  松原中央公園地図

白松があるとは知らなかった。先生は白松を見るために韓国ソウルの憲法裁判所まで行かれたそうです。その説明を聴いて、4班の女性の方が、松原市の中央公園にありますと発言された。先生はこんな近くにあるとは知らなかったとおっしゃった。

このやり取りを聴いて、韓国は無理だとしてもせめて松原市の白松はぜひ見たいと思った。

左に、韓国の憲法裁判所の白松の写真と、松原中央公園の地図を乗せました。写真から本当に幹が白い松があるのだと知りました。


銀杏の木や銀杏の雄雌は何で判断するのだろうか

      雌のイチョウ        雄のイチョウ      雌雄の銀杏の実
      雌のイチョウ        雄のイチョウ      雌雄の銀杏の実

イチョウの雌雄の鑑別については諸説あるが、立木風情からは枝が垂れているもしくは水平なのがメスで、枝が上に向かっているのがオスだと教わりました。

 また銀杏の雌雄については、写真のように表面が2面のモノがオスで、3面のモノがメスだそうです。このメスの種を植えると30年後に新しい銀杏ができるそうです。

 実際には銀杏の実が落ちている木がメスと判断するのが最も正しいと先生はおっしゃっていました。

 しかし焼くと美味しい銀杏も、実の時はなぜあんなに臭いのでしょうか?

  


              クスノキのダニ室
              クスノキのダニ室

名古屋大学大学院 西田佐知子ホームページより

クスノキのダニ室では、植食性と思われるダニが圧倒的に多く見られます。なぜクスノキのダニ室には、葉に悪さをする「悪い」ダニがいるのでしょう?この謎を解くため、私たちはキャンパスのクスノキで2001年より調査をしています。
実際にどんなダニ室が作られ、中にどんなダニがいるのかを調査した結果、クスノキでは1枚の葉に、幾つものダニ室があることがわかりました。そして、葉のどの部分にダニ室ができるかによって、ダニ室の形が違い、形が違うと中にいるダニも異なることがわかりました。
それでも、一番多いダニは、やはり植物に害を与える植食性のフシダニでした。そこで、このフシダニの増減とクスノキの葉の関係を一年間調べてみました。すると、ダニが最も少なくなるのは春で、その理由は、クスノキがダニをダニ室の中に入れたまま、多くの葉を落としてしまうためであることがわかりました。ダニ室の入り口は秋には狭くなり、ダニは中に閉じこめられてしまいます。クスノキのダニ室は、植食性のフシダニを閉じこめて排除する器官である可能性があります。現在、論文を準備中です。

 


紅葉のメカニズム

 黄色い紅葉は、緑色の葉緑素の影に隠れていたカロテノイドが、葉緑素が分解していく中で、見えてくるので黄変するのだそうです。お酒を飲むと普段紳士面の人が、突然狂暴者に代わるのも同じ原理でしょうか?

 赤色の紅葉は、糖分が日光でアントシアニンに代わるためだそうです。お酒の弱い人が、アルコールで赤くなるのはどうしてでしょうか?

 しかし秋の紅葉はいつ見てもいいですね。

 


所感

 身近にあって知っているけど、十分識らないものとして、今回の仏像と樹木がある。何気なく見ていて、ぼんやりその名前も覚えていて、その存在に特に注意を払うことなく生活している。本日のように入門編として、詳しくご説明をいただくと、新たな興味が芽生え、今度観る時はじっくり注意深く観察してみようかと思う。しかし知らないことが多いですね。毎回毎回がすごく勉強になります。